痛みの分類とトリガーポイント

痛みの分類

私たちが遭遇する筋肉や関節の痛みには、大きく分けて 2 種類の痛みがあります。

1. ケガによる痛み

人間の組織は、予期せぬ外部からの衝撃によって損傷を受ける事があります。 筋肉、皮膚、時には骨などの組織が傷つく事によって、神経を通じて脳へ痛みという信号が送られます。 また、傷ついた組織は、すぐに自己修復が始まります。 組織の修復のためには血液が必要で、そのために集まった血液が患部を炎症させ、更なる痛みを発しま す。
この 2 段階の痛みが、いわゆる「ケガの痛み」です。

例を挙げると、

  1. 転んで膝を擦りむいた。
  2. ボールが当たって打撲した。
  3. 交通事故で骨折した。
  4. 激しいスポーツで肉離れを起こした。

などがあります。

2. ケガではない痛み=慢性痛

一方で、筋肉においては前述のような損傷や炎症がなくても、痛みを発する場合があります。

人間の細胞組織は常に作り替えられていて、筋肉は 1 ヶ月で約 60%もの細胞が常に入れ替わっているといわれています。

その細胞の修復過程において、あまり動かされることなく血行不良の状態で細胞再生が行われると、筋肉の中に、部分的に硬く凝り固まった部分が出来てしまいます。

これをトリガーポイントと言います。 トリガーポイントは、程度が軽ければ「凝り」と表現される事もありますが、重度になってくると、あたかも損傷したかのような鋭い痛みや、その筋肉が関連する関節痛を引き起こすことがわかっています。

つまり、同じような痛みでも、

1「ケガによる痛み」炎症(血が集まっている)による痛みと、2 「ケガではない痛み=慢性痛」血行不良(血が足りない)による痛みとでは、全く逆 の事が起こっているのです。


✳︎トリガーポイントとは「痛みの引き金点」という意味で、疲労した筋肉や筋膜などの奥深くに形成される、押すと痛みを感じる硬結(硬く凝り固まった部分)のことです。
大きさは数ミリ~数センチと様々で、進行すると、その部分そのものが痛むだけでなく、別の場所に痛みを飛ばす性質がある事が知られています。
トリガーポイントは決して珍しいものではなく、程度の差こそあれ、誰の体にも存在するものなのです。

あなたのつらい痛みの原因はケガではありません!

もしもあなたの首が、ケガではなく、トリガーポイントによる痛みで辛かったとします。

ケガではない痛みでも、重度のトリガーポイントであれば人によっては激痛です。 そこでもしもあなたが、「首にケガをした」と思って、ケガの処置を続けるとどうなるでしょうか?

筋肉は安静にされ動かされない事によって更なる血行不良に陥り、新たなトリガーポイントを生み出し ます。

冷却、圧迫も同様に、患部の血行を更に悪化させます。 結果、痛みによって、首だけでなく、周辺の肩や腕、背中といった部分にも辛い症状が広がっていきます。

この痛みはケガ?それとも慢性痛?

素人目には判断が難しい「ケガ」と「慢性痛」。 具体的な例をいくつか挙げてみましょう。

事例 1
転んで骨折した。 →これはわかりやすく「ケガ」です。 骨折とは骨の損傷です。当然骨折はかなりの痛みを伴います。

事例 2
パソコンを続けているといつも首が痛くなる。 →これはわかりやすく「慢性痛」です。 おそらく首周辺に原因となるトリガーポイントが存在すると思われます。

事例 3
朝起きて着替えている時に、急に首が痛くなった。 →少しわかりにくいですが、これも「慢性痛」です。 「着替える」という「外部からの衝撃」とは言い難い事がきっかけになっている場合、損傷が起きた可能 性は極めて低いです。 もともと存在したであろうトリガーポイントが、ふとした事をきっかけに痛み出した、という慢性痛の 症状です。

事例 4
四十肩で肩が痛くて上がらない。 →四十肩や五十肩で、「肩を痛めた」と表現される事もありますが、これも損傷ではありません。 痛みが出てから初めて症状に気づく方が多いのですが、実際はその数週間~数カ月前から、筋肉が硬く なってきてしまっているケースが大半です。症状は「慢性痛」、安静やアイシングは厳禁です。

事例 5
重い物を持ったら腰が痛くなった。 →ぎっくり腰などの急性症状は、発症初期はケガの処置(RICE 処置)が痛みの緩和には有効です。 ただし、有効なのは初期だけで、ある程度痛みが緩和してきたら、トリガーポイントを解除していく過程 が必要です。
特に、慢性化してしまった腰痛に関しては、ケガの処置を続けるべきではありません。 最新の腰痛ガイドラインでも、出来るだけ早く日常動作の制限をやめ、可能であればスポーツに早期復 帰することが推奨されています。
つまりは、腰痛も大部分の症状は「慢性痛」なのです。

例を挙げてみると、いかに多くの痛みが「ケガ」ではなく「慢性痛」であり、多くの方が「痛みの勘違い」によって治りを遅くしてしまっているか、ということをご理解頂けましたでしょうか?

では、どうやって「慢性痛」を改善するか?

ケガではない痛みにケガの処置をしたところで、治らないばかりか、逆に症状を悪 化、慢性化させてしまいます。

「慢性痛」に必要な治療は、筋肉の血行を改善して、適切に動かしていくことです。 当院では、トムソンテーブルを活用した骨格のアライメントの修正と動作に関連する筋・筋膜の調整を行うことで、副作用が少なく効果的にトリガーポイントを解除し、血行を改善していく事が可能です。

また、必要に応じてストレッチやエクササイズなど、ご自身でも積極的に動かすようにアドバ イスしております。

大好きなゴルフやヨガはしばらくお休み?
そんな事はありません。 むしろ、スポーツと治療と並行して行って頂くことにより、身体の感覚が研ぎ澄まされ、回復は早くなります。

また、整形外科のレントゲン検査などで、

「異常なしと診断されたのに痛い」「どうしたらいいかわからない」 とお悩みの方は多いですが、「異常なし」なのであればそれは、 「ケガはありません、動かして大丈夫です」 と言われているも同然です。

おかしいな、痛みが治らないな、繰り返してしまっているな、と感じる時は、今までの痛みの既製概念を離れ、正しい治療に向けた新たな一歩になることを願っています。